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2022年

適切に処理しましょう!循環する汚染物質「POPs」について


こんにちは。今回は「POPs」と呼ばれる有害物質についてお話したいと思います。

POPs」とはPersistent Organic Pollutantsの頭文字を取ってつけられた汚染物質の総称で、ダイオキシン類PCBなどの残留性有機汚染物質のことを指します。「残留性」とあるように、これらの物質は適切な処理を行わない限りほぼ永久に環境中に残り続ける物質でもあります。それではこのPOPsは、どのようにして環境中に残留するのでしょうか。

POPsは産業廃棄物を焼却したときに発生する物質で、大気を経由して広範囲に拡散します。大半は発生源周辺地域の土壌に落ちて、その土壌や地下水を汚染するのですが、発生源が海や川に近かったりすると、大気中を移動するPOPsは最終的に海洋に降り注ぐことになります。

沈降したPOPsは海洋に沈降すると食物連鎖により魚類イルカクジラなどの高次捕食者に取り込まれていくことになります。そしてこのPOPsの特性の一つに脂溶性というものがあるのですが、魚類やクジラ類に取り込まれたPOPsは脂肪に蓄積されていきます。

POPsで汚染された魚を食べれば、当然私たち人間もPOPsに汚染されることになります。魚類と同様に脂肪に蓄積され、長期間にわたって蓄積していけば、発がんリスクが高まったり、内分泌系への障害が出たりすることもあります。また人間はほかの動物に比べてPOPsの代謝が緩やかで、半減期は物質にもよりますが、数年~10年以上と比較的長めになっています。とはいえ通常の生活レベルでは健康被害が出たという報告はありませんので、その点はご安心ください。

ただし事故等でPOPsを大量に摂取してしまうと、上述の通り、特に内分泌系に異常が出てくることがあります。具体的には手足のしびれ肝機能障害皮膚異常生殖機能異常奇形児などの症状が報告されています。日本国内では1968年に起きたカネミ油症事件が大規模なPOPs汚染の事例になります。

カネミ油症事件では、食用油にPCBが混入し、それを摂取した人たちに上記のような症状が表れ、国内では大きな問題となりました。この事件以降、PCBの有害性と危険性が世界中に広まり、様々な法整備が進められることになりましたが、POPsによって発症した症状に対する具体的な治療法は現在も確立されておらず、いまもなお後遺症に苦しむ方がいることも事実です。

このようにPOPsは直接摂取による健康被害リスクというものを大いに孕んでいる訳ですが、実はこの健康被害リスクは直接摂取だけではありません。先述のとおり、POPsは脂溶性で人間では脂肪に蓄積されていくのですが、この特徴が私たち哺乳類に多大な影響を与えています。

私たち哺乳類は子供が生まれると母乳を子供に与えますよね。母乳には多量の脂肪分が含まれているのですが、このとき母親の体内にPOPsが多く蓄積されていると、その母乳を介して母親から子供にPOPsが移動していくことになります。さらに大人の体重に対して子供の体重は非常に小さいので、大人にとってはごく微量であっても、子供では発症するレベルであることもあります。

この影響を大きく受けているのがイルカ・クジラ類です。イルカやクジラではPOPsの母乳への移行量が人間の20倍程度と非常に高く、さらにPOPsの代謝は人間の3分の1以下とかなり低いことが分かっています。カネミ油症事件で症状が発症した方々の脂肪1gあたりのPOPs含有量は約1,000pgで、この数値は健常者の100倍以上でした。これだけでもかなり高い数値なのですが、ヨーロッパでの研究によると地中海に棲息するクジラが蓄積していたPOPs含有量はなんと10,000pgという数値だったそうです。

このようにしてPOPsは動物の体内に蓄積していくだけでなく、母乳を通じて世代を超えてへ移行していくことから、一度環境中に放出してしまうと、その環境中を循環していくため半永久的に残留する非常に厄介で危険な有害物質となります。法整備により新たに発生することはほぼなくなりましたが、いまなお全てが処分されたわけではありません。処分期限が決められている物質でもあるので、期限までに適切に処分され、今以上に環境が悪化しないことを望むばかりです。

■参考 
ダイオキシン類概要
カネミ油症事件(Wikipedia)
ストックホルム条約(環境省)
■関連ページ
土壌汚染調査対象物質PCBの毒性~子供や孫の世代まで続く健康被害~
ダイオキシン類のことについてご存知ですか?~人への影響、生成条件は何?~
PCBが原因で引き起こされる土壌汚染の健康被害について~カネミ油症事件~
■当社関連ページ
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第2種,第3種特定有害物質の詳細

酒井


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