瓦の製造工場って、土壌汚染が関係があるんでしょうか。
瓦の製造工場では、過去に焼成時の排ガスからふっ素化合物が排出されて問題がなった時期がありました。また、瓦の釉薬では過去に酸化鉛が使用されてきました。
現在は対策が講じられてきており、古い瓦を再生材として利用もされています。
瓦の製造工場では、釉薬で酸化鉛等使用するため売却する際には、土壌汚染調査を求められることがあります。瓦の製造工場の土壌汚染の可能性ついて詳しくみていきたいと思います。
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瓦の製造工程とは?
瓦の製造工程で考えられる土壌汚染物質ってどんなものなんでしょう??
瓦の製造工程で使用される土壌汚染物質は?
瓦釉薬とふっ素化合物
少し古い資料になりますが、昭和50年の埼玉県大気騒音部大気科の調査「黒瓦焼成排ガス中のフッ素化合物含有量調査」から紹介します。
はじめに
主な調査箇所は、埼玉県北部の美里町と児玉町。
埼玉県北部は古くから瓦製造工場が多く、昔は黒瓦の製造が多かったが、最近はこれらの工場のうち、釉薬瓦工場に転業するものが増え、県北だけでも20数工場が釉薬瓦を製造している。
そのためか、3,4年前から桑畑に被害が出はじめ、これら桑葉で飼育された蚕が育たなかったり、あるいは完全な繭をつくらない、という訴えが地元養蚕業者より明らかにされ、その原因が工場からでる煤煙、ガスによるものではないか、との推察のもとに工場周辺の大気、桑葉、工場より排出される煙道ガス、瓦の原料などについて原因物資を追求するとともに、蚕の飼育試験(蚕業試験場)もあわせて実施されました。
結果および考察
具体的な実験や考察方法は、省略しますが、調査の結果、フッ素化合物が、最高100ppm以上排出されていることが明らかになりました。
埼玉県の追加の調査においても釉薬にフッ素がふくまれていたことが示されています。
これらの大気中へのフッ素の排出については、除害装置を設置をすることで解決が図られました。
瓦釉薬と鉛化合物
他にも瓦の釉薬として「酸化鉛」などが使われてきました。
島根県産業技術センター研究報告から一部をご紹介します。
赤茶色の来待色瓦は、来待石を主な釉薬原料としている。来待石は,主として酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルカリおよびアルカリ土類金属の酸化物から構成され、単味の来待石が特有の赤茶色を発色するためには1300℃前後の焼成が必要とされている。昭和52年当時はSK26~SK27あった坏土の耐火度が、昭和56年には良質な粘土の枯渇により大半がSK20以下となったと報告している。
この坏土の耐火度の低下に合わせて瓦の焼成温度は30~50℃低下し,現行とほぼ等しい1200℃近傍での焼成が昭和56年頃から始まった。焼成温度が低下すると,来待石釉薬のみならず従来から使用していた各種釉薬の溶融温度も低下させる必要があり、釉薬メーカーによると,同時期頃から釉薬の融剤として酸化鉛が使用された。
その後の釉薬の改良により,現在は大半の釉薬で酸化鉛は使用されていないが、未だ一部の製品には使用されており,瓦産地として鉛フリー化は達成されていない。他方、別の産地で耐火度が低い坏土を利用している地方は、釉薬瓦に移行が始まった昭和40年頃から融剤として、鉛やほう素を添加しガラス化したフリットを利用していたが,2010年頃から瓦産地として釉薬の鉛フリー化を宣言している.
産地でも鉛フリー瓦など取り組みは進んでいます。このように釉薬に「鉛」や「ほう素」が含まれている古瓦ですが、廃瓦を再生材としてリサイクルできないかという研究もされています。
産地にもよりますが、鳥取県内の瓦について鉛釉薬瓦は瓦全体の含有量として評価すれば基準値を超過しないといった研究も報告されています。
まとめると、以下のようになります。
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