印刷工場で確認される土壌汚染の種類と、使用用途とは
印刷工場では、どんな土壌汚染物質が使われている・もしくは使われていた可能性があるのでしょうか。
印刷工場で土壌汚染が懸念される特定有害物質としては、
- トリクロロエチレン(トリクレン)
- ジクロロメタン(メタクレン)
土壌汚染対策法で定められている第1種特定有害物質(溶剤などに含まれる揮発性有機化合物等)に該当します。
が挙げられます。オフセット印刷工場で洗浄剤として使われている・もしくは使われていた可能性があります。
印刷工場では、塗料の原料として鉛やカドミウム、六価クロムなどが含まれているケースがあります。その他にもセレンや、水銀、砒素なども含まれているケースがありました。これらの有害物質は塗料の色を出すために含まれているモノであり、現在は代替品の活用が主流となっています。
- 鉛
- 六価クロム
- カドミウム
- セレン
- 水銀
- 砒素
土壌汚染対策法で定められている第2種特定有害物質(重金属類)に該当します。
印刷工場でも現在使用されているような複写機などであれば塗料が土壌汚染の問題になるケースはあまり考えにくいのですが、活版印刷など塗料をそのまま使用したり、余った塗料を適切に処分をされていない場合には、土壌汚染となるケースが多いように思います。また似たような業種の塗装工場等でも同じような有害物質が見つかるケースがあります。
これらの特定有害物質が必ずしも印刷工場で使用されているわけではありませんが、これらの特定有害物質が土壌汚染として見つかるケースがあります。現在使っていないからと言って、過去に使用されていなかったということは言い切れないので注意が必要です。もちろん工場で使用されている塗料が溶剤等について詳しく調べて、使用された形跡がないものであれば調査項目から除外することも可能です。
現在は、重金属類が含まれない顔料へと移行が進んでいますが、過去にカドミウムイエロー、シルバーホワイト等の顔料には重金属類が含まれていました。
少しマニアックになりますが、どんな塗料が該当するのかは、こちら↓でまとめていますのでご覧下さい。
印刷工場で義務調査が必須のケース
土壌汚染対策法に該当
土壌汚染対策法の義務調査の対象となる、水質汚濁防止法の特定施設としては、以下のものが該当します。
二十三の二 新聞業、出版業、印刷業又は製版業の用に供する施設であって、次に掲げるもの
- イ 自動式フイルム現像洗浄施設
- ロ 自動式感光膜付印刷版現像洗浄施設
上記の施設があり、特定有害物質を使用されている場合には施設の廃止時(法3条)や900㎡以上の土地の改変(法4条3項)の際に、義務調査が必要となります。
条例に該当
上記の施設はないが、印刷工場で特定有害物質の取扱いがある場合は、東京都では環境確保条例の調査が必要になります。
東京都では、区が独自に工場を調べ、工場を廃止する際には土壌汚染調査を行い報告して下さいと指示することがあります。これらは環境確保条例116条に則った土壌汚染調査を行わなければなりません。
東京都以外でも、独自に条例を定めている行政がありますので注意が必要です。
土壌汚染調査でお困りのこと、ご不明な点がありましたら、是非ジオリゾームにご相談下さい。
印刷工場で義務調査に該当するケースについては、こちらでフロー図でも解説しています。
現在、特定有害物質を使っていない印刷工場の土壌汚染調査は、するべき?それともしなくていい?
印刷工場では、特定有害物質が必ずしも使用されているわけではありませんが、うえで取り上げてきた特定有害物質が土壌汚染として見つかるケースがあります。
ですので、印刷工場の場合には、土地売買の際に、土壌汚染調査をしてから契約をするというケースが増えています。多くのは場合は有害な物質がその土地で使用されていたかも・・・という不安があるときに調査を行うことが多いようです。購入を希望する土地に汚染があると不動産価値や健康にも影響が出てくるからです。
では次のような場合は調査を行う方が良いのでしょうか?それともしなくても良いと思いますか?
『50年間、印刷業を行っていて、現在も稼働中の工場がある土地の売却を検討している。現状では、特定有害物質は使用しておらず、工場を廃止したとしても行政から調査をするようにと言われることもない。』
一見すれば、特定有害物質は使用していないというし、行政から調査をするようにという指示もないので、土壌汚染調査の必要性はないようにも思えます。
しかしながら、土壌汚染対策法は2003年に施行されたためそれ以前に特定有害物質を使用していたとしても、行政から調査をしなさいとは言われないのです。そのため、もしかすると過去に特定有害物質を含むインクや、印刷機の清掃に特定有害物質を含む薬剤を使用していた可能性があります。
現在の事業主が有害物質を使用していなかったとしても、先代が使用していてその情報を知らなかったということも珍しくありません。過去にも印刷工場の調査をしていた中で、現在は特定有害物質を使っていない工場で土壌汚染が判明したというケースは多くあります。印刷工場の土壌汚染調査では、行政への特定有害物質使用の届出の有無だけで判断をすると、思わぬ落とし穴が待っていることもありますので、土地売買の際には現在の状況だけでなく過去まで遡って土壌汚染調査を行うのかを判断されることをお勧めします。
調査について
印刷工場や現像工場などで見つかるトリクロロエチレンなどの溶剤を調査する場合には、土壌ガス(土の中の空気)を採取して分析します。
重金属類と呼ばれる有害物質を調査する際には、土壌の表面から50㎝の深度まで土を掘り、試料採取を行います。
いずれの物質も土壌汚染調査をする際には、使用箇所を見定め、調査を行うことになります。
採取した試料を分析し有害物質が基準を満たしているか、分析を行い、土壌汚染の有無を評価します。
土壌汚染が無しと判断できる場合には、調査はここまでで完了となるのですが、土壌汚染が見つかった場合には、汚染の深さや地下水への影響を調査する必要が出てきます。
印刷工場の土壌汚染、土壌汚染調査についてお困りごと、ご不明な点等、何でもお気軽にご相談ください。
◆以下のページもご参照ください
・土壌汚染調査の流れ
・土壌汚染調査の費用について
・土壌汚染対策法とは?
・調査契機 一覧
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