以前、ブラジルで鉱山ダム(鉱滓ダム)が決壊したというニュース(AFPPBNews)をみました。深緑だった川の色は、赤褐色に染まってしまったということです。この鉱山ダムというものは、鉱物の分離工程や製錬工程にて生じたスラグ(鉱滓)を水分と固形分とに分離し、その固形分を堆積させる役割をもつ施設です。このスラグには重金属などの有害物質が含まれていることがあります。
この事件でも、採掘過程で生じた廃液をためていたようで、有害物質を含む土砂が広範囲に広がり、家や田畑も飲み込んだ、とのことです。
日本でも過去に石炭を炭鉱から掘り出している時代には、鉱山での事故というものは多発していたそうです。有毒ガスによる火災や粉塵爆発、崩落事故など多くの鉱業事故の情報が出てきます。それらの中の有害物質による被害が出たもので、日本で一番有名なのが足尾銅山の鉱毒(カドミウム化合物)ではないでしょうか。
現在では採鉱による排水や精錬作業によって出てきた排水については有害物質を多量に含んでいるということがわかっており、重金属を沈殿・除去など無害化処理を行い、酸性が強い場合には水産物や農作物に影響がないように十分に処理されているそうです。しかし中には、現在は廃坑になっている鉱山から有害物質が流出しているのも事実で、河川や作物に使うことが無いように高架を作成し、鉱山からの排水のみが流れるようになっている場所もあります。そうすることで有害物質が農作物や水産物に触れることが無いように細心の注意をもって管理をされているそうです。
栃木県にある足尾銅山周辺にて起きた足尾銅山鉱毒事件は、銅を精錬する際の有害ガス、排水が渡良瀬川を下り、汚染物質が足尾銅山周辺から千葉県の行徳にまで被害を及ぼしたと言われています。群馬県太田市では稲の立ち枯れが起こるようになり、稲がカドミウムに汚染されているということが判明しました。稲は土壌中のカドミウムを吸収するためにお米に含まれるようになります。この汚染された稲や野菜、水を摂取し続けた人々には骨がもろくなり、わずかに体を動かしただけで骨折してしまうという健康被害が生じました。これが日本初の公害病で四大公害病の一つであるイタイイタイ病です。そして鉱山で起こる鉱害は公害へと変わっていきました。余談ですが、稲はカドミウムを吸収することでそれを食べた人体には悪影響が出ますが、土壌中のカドミウムを吸収させて土壌を浄化するファイトレメディエーションというものも研究されています。
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土壌汚染物質の種類と基準値
土壌汚染調査の流れ
土壌汚染だけではなく、排水や地下水汚染なども健康被害を起こす可能性が十分にあります。汚染物質というのは目に見えません。色の違いだけで汚染物質の有無を把握することはできません。汚染物質が土壌や地下水に流れてしまうと、たいへん莫大な浄化費用を支払わなくてはなりません。
上記のブラジルの鉱山ダムの崩壊事件にしても、日本国内も他人事ではありません。
日本にも、かつて鉱山として栄え、廃坑になった後は有害物質を含んだまま放置された鉱山ダムがいくつもあるのです。それらが地震や集中豪雨などの自然災害によって崩壊し、土砂災害や土壌汚染を引き起こす可能性があります。過去には、ダムの決壊事件で数多くの犠牲者がでたり、流出した有害物質で河川が汚染されたケースもあります。
直近の例では、2011年の東日本大震災により宮城県気仙沼市の鉱山ダムで液状化現象が発生し、流出した汚泥土砂が広範囲を汚染する事態になりました。
今現在有害物質を使用されている方の中には、危険性を知らずに使用していることもあります。危険性を十分に理解し、注意してケガや事故の無いように使用してください。
また使用の終わった薬品については適切な処分を行い、土壌汚染や地下水汚染や健康被害を引き起こさないように十分に注意をお願い致します。
過去には、金属を精製する企業が、有害物質を含む産業廃棄物を、工業用薬品として流用。それが巡りにめぐって食品加工に用いられることになり、危険な有害物質が混入した食品が大量に流通するといったケースがありました。危険意識や安全管理への意識が欠如していたが故の悲劇でした。
土壌汚染や地下水汚染のことで、調査をしてみたい、汚染があるか不安。そんな場合にはお気軽にジオリゾームまでお問い合わせください。
森上
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2022年4月11日追記
前回鉱山から引き起こされる鉱害について記載をさせていただきました。
今回は電機製品などを取り扱っていた工場跡地からテトラクロロエチレン等の有害物質が地下水汚染を引き起こしていた事例について触れてみたいと思います。
神奈川県から地下水汚染について公表されたのが、2022年2月2日となっており二宮町および小田原市にまたがる土地の地下水汚染について(出典:神奈川県記者発表資料)とされています。
神奈川県小田原市にある工場でテトラクロロエチレンを使用していたようですが、土地所有者が土壌汚染調査や地下水調査を行なった際に、基準を超えるテトラクロロエチレンやその分解生成物が検出されたということのようです。
テトラクロロエチレンなどの第1種特定有害物質と呼ばれる汚染物質は、地下水流向にって1km程離れた地点でも検出されてしまうことがあります。
今回のケースでは、2月2日に公表されており、2月22日に周辺地域の地下水調査をこなった結果を公表しています。(二宮町および小田原市にまたがる土地の地下水汚染に係る周辺地下水調査の結果について 出典:神奈川県記者発表資料)
周辺地域ではテトラクロロエチレン等の有害物質は基準を超えているような地点はないという結果となっているようです。飲用に利用されている井戸があれば健康被害が出ていてもおかしくはない状況なので、県なども早急に対応されていたようですね。
このように、鉱山地域だけではなく、過去に工場などで取り扱われていた有害物質が地下水から検出されてしまうことがあります。日本でも飲用や生活用水として井戸を使用していることというのはあります。井戸が引かれていない発展途上国などでは井戸水を飲用として生活をしているということがあります。土壌汚染が地下水まで浸透している場合には、健康被害として顕在化するケースがあります。
土壌汚染調査では、地下水まで調べ健康被害になってしまうこと未然に防ぐ対策を取ります。
汚染土壌とは違い、地下水は常に流動的であり、動き続けているという問題があります。対象地について、汚染土壌をすべて取り除いたととしても、地下水汚染が残っていれば、健康被害を引き起こしてしまう可能性があります。
土壌汚染のことで気になること、わからないことがあれば、
是非ジオリゾームにご相談下さい。
森上
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♦第1種特定有害物質の詳細
♦都道府県条例 神奈川県
*業務時間外は、直接担当者に繋がります。
1 個のコメント
とても良い