土地を買うというのは大きな買い物ですから、しっかりと土壌汚染調査を行うことをお勧めしております。いざ購入してみると、土壌汚染まみれだったなんてこともあるかもしれません。
土壌汚染調査を実施する過程の中には、フェーズ1、フェーズ2、フェーズ3という種類があります。どのような違いがあるのかご存知なく気になっているという方もいるのではないでしょうか。
今回、それぞれの調査がどのような意味があるのかについてご説明いたします。
フェーズ1(地歴調査、土地履歴調査)
フェーズ1とは、地歴調査や土地利用履歴調査と言われてます。業界では地歴調査や地歴といわれてます。このフェーズ1(土地利用履歴調査)は、読んで字のごとく対象地がどのような形態で利用されてきたのかを調べます。
では、どうやって調べるのかということですが、皆さんであればどのように調べますか?最近ではグーグルマップなどでも過去に建屋があったのかなどを調べられたりしますね。
土壌汚染調査では、登記簿を用いて土地の持ち主を調べたり、住宅地図や空中写真で住宅なのか、畑なのか、工場だったのかを調べます。
不動産の過去の履歴については、住宅地図をさかのぼって調べるとどんな名称の工場だったのかを知ることができます。また過去までさかのぼり工場などの履歴がなく、畑や林などであれば、人為的な土壌汚染はないと判断することも可能です。
工場の履歴があった場合にも名前からおおよその業種を把握し、どんな有害物質を使用していたか、もしくは使用していた可能性があるのかを絞り込むことができます。そして空中写真で実際に建屋があるのかどうか、何時から何時まで工場が立っていたのかなどを把握することができます。もしくは住宅地図がない時代の情報を得ることができます。また、直近に工場などの履歴がある場合には、事業主の方へどんな作業を行われていたのか、どんな薬品を使っていたのか、どこで使用し、どこに保管していたのかなどをヒアリングをおこないます。
そんなことを調べて土壌汚染が分かるの?
という声が聞こえてきそうですね。確かに実際の対象地の土壌や土壌ガス、地下水などの汚染物質を調べているわけではないので、結論から言うと白や黒と言い切ることはできません。実際にわかるのは汚染の可能性のみで、実際に土壌を採取し、調査を行わなければ、汚染の有無を判定することはできません。しかし、もっとも簡単に土壌汚染の可能性を把握をすることができる方法です。
本来土壌汚染調査の中でフェーズ1(地歴調査)というのは、実際に土壌の試料採取を行う前段階で行われるものであり、工場内のどの施設で土壌汚染に係る物質を使用していたのか、どんな形状のものを使用していたのか、有害物質の処分方法、配管はどこを通り廃棄場所へと行くのか等、多岐にわたっての有害物質の知識や土壌汚染の知識が必要となってきます。ただ何となくでやってしまうと、まったく意味のない報告書が完成してしまうのです。
これらの情報をすべて活用して、土壌汚染が引き起こされている可能性を判断します。フェーズ1については現地で土壌を採取することはなく、資料を確認し調査を行うこととなります。
フェーズ1を行うメリットは、対象地がどんな使われ方をしていたのかを戦前までさかのぼって知ることができる他、土壌汚染調査で調査の対象となる土壌汚染物質を絞り込み、さらに使用していた範囲などを絞り込むことで、試料採取を含む調査自体に係る費用を削減しコストダウンさせることを目的として行うこともあります。
東京都の住宅地など小さな敷地に関して言えば、地歴調査は行うことなく、土壌採取を行うこともあります。ケースバイケースですね。
民家だったのか、工場だったのか、畑だったのかを知ることができるだけでも安心感が得られますね。
フェーズ2(表層土壌調査、ボーリング調査)
フェーズ2は実際に土壌や土壌ガスを採取して調べ土壌汚染が有るのか無いのかを調査します。実際に土壌を採取し、分析の結果が出ることから土壌汚染の有無が目に見える調査となっています。
ちなみに表層土壌調査では表層から50cmまでの土壌試料と、土壌中のガスを採取します。そこで土壌汚染となる物質(特定有害物質と言います)が基準値を満たしていれば、土壌汚染の無い土地と判断できます。
表層土壌調査で特定有害物質が基準を超える濃度で存在していた場合には、ボーリング調査を行うことになります。ボーリング調査では10mまでの土壌試料や地下水試料を採取し、表層土壌調査で見つかった特定有害物質がどの程度の深度まで広がっているのかを確認します。
フェーズ1とは違い、実際に土壌等の試料を採取しますので、土壌汚染の現状を把握することができます。
例えば、フェーズ1で「おそれ有り」と評価されたとしても実際に汚染があるのかどうかは土を分析してみないと分かりません。逆に、フェーズ1で民家等としてずっと使用されてきた土地であり「おそれ無し」と評価されていたとしても、家を建てる前に盛り土のために外から持ってきた土に土壌汚染があった、というケースもあります。実際に、汚染があるのか否かを調査するのが、このフェーズ2調査の表層土壌調査となります。
では、どう表層土壌調査を進めているのかを紹介したいと思います!
➀位置出し
事前に作成した地点配置図を基に、土壌採取を行う地点を出していきます。
埋設管等が確認される場合があるため、土地の所有者様等と確認しながら位置を出していきます。また、建屋内で行う場合は、梁等も加味しながら地点を決定します。
道路に面している場所や駐車場では車両・第三者との接触に注意しながら進めていきます。地点配置図通りに採取地点が決まることは中々ありません。その場で対応しながら地点を決めることで安全かつ丁寧に進めていきます。
➁被膜除去作業
物がある場合や駐車場等アスファルトやコンクリートで地表が覆われている場合は、被膜除去を行います。コアカッターという機械を用いて、削孔し被膜を除去していきます。除去する面の大きさは直径15㎝程の円形です。削孔する際には1畳程度の広さが必要です。
➂土壌採取
ハンドオーガー・ダブルスコップという道具を用いて土壌を採取していきます。採取箇所が多い場合は、ジオプローブ等の機械を使用し掘削採取を行います。
被覆がない裸地では、地表から50㎝まで掘削していきます。砕石等がある場合は砕石から下50㎝を掘削していきます。
被覆がある場合は、アスファルト・コンクリートの下50㎝を掘削していきます。被覆がある場合でもない場合でも、慎重に掘削を行います。なぜかというと、位置出しの際に埋設物等の確認をしていたとしても、埋設物にあたる可能性があるからです。
土壌掘削後は、土壌の採取を行います。1地点にて0から50㎝の内、
・0から5㎝の土壌
・5~50㎝の土壌
をそれぞれ採取していきます。(分析を行う際にこれらを均一に混合し分析検体1検体とします。)
※こちらの表層土壌調査でご紹介している土壌採取の過程はあくまでも第二種・第三種特定有害物質(重金属類・農薬類)を調査するための流れです。(第一種特定有害物質の調査の場合は、土壌の代わりに土壌ガスを採取します。)
④復旧
被覆がない場合は、周囲の土壌や砂を用いて復旧していきます。被覆がある場合は、セメントを用いて復旧していきます。掘削しているため、穴の凹みでの躓きによる転倒等が無いよう丁寧に復旧します。
⑤調査期間、分析期間、報告書作成
実際に土壌を採取する調査の期間については土地の形状や建屋の有無にもよりますが、建屋がある状態ですと1区画(900平方m)で施工は1日程度。更地の状態ですと、2区画(1800平方m)で施工は1日程度となります。
次に採取した土壌を分析し、結果が出るのが、約2週間程度。分析結果を踏まえ報告書を作成するのに5日間程度となります。
開始から報告書の提出までおおよそ1カ月程度かかります。
<関連ページ>
・表層土壌調査
・土壌汚染物質(種類と基準値)
・詳細調査
・機材紹介
フェーズ3(浄化対策工事)
フェーズ3は土壌汚染浄化対策工事です。ボーリング調査で汚染が見つかった範囲について、掘削除去などの土壌の入れ替えや、薬剤や微生物を用いて特定有害物質を健康被害の出ない濃度まで下げるなど、さまざまな対処法があります。
土地売買など、すぐに土地を動かしたい場合には掘削除去を希望されるお客様が多いですが、今後も同じ工場等で使用される場合には薬剤注入などお客様の希望に合った提案をしております。
土壌汚染調査のことに関してわからないこと、詳しく知りたいことなどありましたら、是非お気軽にジオリゾームにご相談下さい。
さて、ここまでフェーズ1、フェーズ2、フェーズ3のお話をさせていただきましたが、
中にはフェーズ0.8や、フェーズ1.5と呼ばれるような土壌汚染調査もあります。あくまでも自主的な調査の方法の一つです。
そんな細かいの?💦
と思われるかもしれませんが、考え方は簡単です。
フェーズ0.8(地歴調査の簡易版)
フェーズ0.8はフェーズ1(地歴調査)を簡易的に行うタイプの調査です。
フェーズ0.8はフェーズ1(地歴調査、資料等調査)で取得が必要な資料の内、住宅地図や登記簿など簡易的に入手が可能な書類のみを収集し、土壌汚染の可能性を調査します。
フェーズ1と異なる点としては、工場等の履歴がある場合に、土壌汚染の可能性がある有害物質の特定や汚染のおそれ(可能性)までは判断がつかないところです。また現地に行くことがない為、フェーズ1よりもお安く調査を行なうことが可能です。
実際の案件としては、不動産売買の際のスクリーニングとして活用されることが多い印象です。土地の購入者の方へ、「購入を検討されている土地はこのような利用をされていますよ」という説明材料というところですね。また不動産会社が、土地購入の検討をされる際に用いられる資料となります。
フェーズ1.5(表層土壌調査の簡易的な調査)
フェーズ1.5はフェーズ2(表層土壌調査)の簡易的な土壌汚染調査です。土壌汚染は気になるけど、実際にやろうとすると膨大な費用が掛かってしまうというケースに使用されます。簡易的に調査を行なうということで、色々なやり方が存在します。
- 広大な敷地の中で、敷地の東西南北と中央部にあたる地点でサンプリングを行う手法。
- 稼働中の工場の中で、土壌汚染の可能性が高いところを数か所サンプリングして、土壌汚染を部分的に調べる方法。
- 法律に基づいた調査を行なう前に、土壌だけではなく地下水の汚染を調査しておく方法。
- 報告書までは必要ないけど、土壌の分析のみ行ってみたい・・・。
etc・・・
フェーズ1.5では簡易的に行う調査という性質上、より詳しい土壌汚染調査をした際には結果が異なることがありますので、ご注意ください。
簡易土壌汚染リスク調査
ジオリゾームでは、フェーズ0.8やフェーズ1.5の調査を掛け合わせた、簡易土壌汚染リスク調査というサービスがあります。
土壌汚染調査を調べたい場所の情報をいただき、有害物質の種類を特定、汚染の可能性が高いと判断される場所を代表地点と定め、土壌汚染を簡易的に調査を行ないます。
- もともと工場があるような場所で、フェーズ0.8の資料も欲しいし、どうせなら土壌の分析結果も欲しいという場合。
- M&Aなどで土地を所有することになる場合。
- 今すぐに工場を廃止することは無いがいずれは移転などもあるという場合。
- ISOで土壌環境についても触れなければならないが、事前に調べておきたい場合。
など自主的な土壌汚染調査であれば様々な用途として活用することができます。土地売買に絡むような場合ですと土壌汚染調査を行い、買主様からのご納得をいただいたうえで、売買成立させておくことで、今後のリスク回避になると思われます。
ジオリゾームではお客様の要望に合致したご提案を心がけております。
土壌汚染のことで気になること、悩みごと、土壌汚染ってどうなの?など、様々なことをお問い合わせいただいております。どんな些細なことでも、ご相談下さい。
土壌汚染リスク回避のポイント、土壌汚染調査の流れや費用についてまとめた無料ダウンロード資料をご用意しております。お気軽にダウンロードしてください。
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