土壌汚染調査を実施する際は、土壌汚染対策法によって定められた特定有害物質26項目が対象になります。では農用地での調査を実施する場合は異なるという事をご存知でしょうか。今回は「農用地での土壌汚染」の考え方と概要を解説していきます。
日本で土壌汚染が注目されるきっかけになったのは足尾銅山鉱毒事件です。この事件では銅が大量に含まれる排水が、周辺地域の水田の灌漑に使用され、その結果稲の立ち枯れが起きました。しかし当時行われた対策は農家への個別の対応だけで、農用地における土壌汚染全般に対してはあまり注目されませんでした。
農用地における土壌汚染が注目されるきっかけとなった出来事は、1968年に発生したイタイイタイ病です。イタイイタイ病は神岡鉱山からのカドミウムを含んだ排水が、水田の灌漑に利用されて起きたものでした。この事件を受けて、それから2年後の1970年、国は「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」(以下、土染法)を定めました。
この法律の対象は農用地に限定されていて、2003年に施行された土壌汚染対策法(以下、土対法)とは別の法律となっています。農用地は土染法、それ以外の土地は土対法、と覚えれば簡単ですね!
土染法では、①カドミウム及びその化合物②銅及びその化合物③砒素及びその化合物の全3物質が特定有害物質に指定されています。(土対法では全26物質なので混同に注意が必要です。)
またこれらの特定有害物質によって農用地の汚染が認められた場合は、都道府県知事から農用地土壌汚染対策地域に指定され、汚染除去等の対策(対策工事についてはコチラをご参照ください。)が必要となります。この辺りは土対法での要措置区域に似ていますね。
基準値についても土対法とは異なります。まずカドミウムは土壌中ではなく、その土地で収穫された米中の含有量で測定され、基準値は0.4mg/kgとなっています。一方銅と砒素は土壌中の含有量基準となっており、銅で125mg/kg、砒素で15mg/kgです。
これがどのくらいの量なのかというと、たとえばカドミウムは土対法では土壌中の含有量基準が150mg/kgです。米と土の差はありますが、土染法の基準は土対法の375分の1なんですね。土に比べて摂取する可能性が高いので、より基準が厳しくなっています。砒素も土対法に比べて10分の1という水準になります。
採取方法も土対法とは区別されます。土染法では圃場の中心及び四隅の計5地点で土壌の採取・分析を行います。米の分析も同じ地点の稲を使って行います。
なお現行の土染法では、以上のような基準は水田=米にしか存在せず、野菜などその他の作物における、土壌汚染の規制等はありません。ただし、カドミウムは他の作物にも含まれる可能性があるので、今後法整備が進められるのではないかと思います。
このように農用地での土壌汚染調査は、一般的な土壌汚染調査とは異なることがご理解いただけたと思います。
弊社ではこういった農用地での土壌汚染調査も対応可能です。お気軽にご相談ください。
酒井
関連ページ:
土壌汚染対策法における汚染物質一覧
種類と基準値
【参考】環境省資料:農用地の土壌の汚染防止等に関する法律
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