こんにちは。今回は重金属類の有害物質であるカドミウムについて、紹介していきたいと思います。
カドミウムは皆さんもよくご存じの通り、イタイイタイ病の原因ともなった有害物質ですね。人体に吸収されると腎機能障害や骨軟化症を引き起こし、最終的には体を少し動かしただけでも骨折するような状態になります。
イタイイタイ病では神岡鉱山から排出されたカドミウムが神通川を汚染し、その水を農業利用していたために流域の農地が汚染されて、その農地で栽培された作物を経由して人々の体内にカドミウムが蓄積されていった結果発症しています。カドミウムは米や野菜に吸収・蓄積されるという性質がある厄介な物質でもあるのです。
そういった背景からイタイイタイ病をきっかけに農用地の土壌汚染を規制する法律(農用地の土壌の汚染防止等に関する法律)が作られました(法律の概要や詳しい背景についての記ブログ事はコチラ)。それではカドミウムによる健康被害については、農用地での汚染防止ができていれば安全と言えるでしょうか?
答えはNOです。カドミウムは非常に有害な物質にもかかわらず、実はとても身近なところに多く使われている物質なのです。
ではどこに使われているのでしょうか。
例えば電池です。ニッケル・カドミウム電池には、名称の通りカドミウムが含まれております。ニカド電池とも言われる蓄電池の一つですね。今でこそリチウムイオン電池が主流になっていますが、水銀電池と並び歴史が長く、また耐久性が高い、生産コストが低いなどの理由から、現在でも多くの電気製品に使われている電池でもあります。
今でこそ電池は回収ボックス等に捨てる時代になってきていますが、昔はそういった電池類を投棄してしまう、ということも少なくありませんでした。土などに埋められた電池が腐食すると、中に含有されているカドミウムが漏れ出し、土壌汚染を引き起こす場合もあります。
他に例を挙げるとすれば顔料でしょうか。自然界に存在する硫カドミウム鉱から産出される硫化カドミウムは鮮やかな黄色を発色するため、顔料や絵具として広く使われています。カドミウムイエローが有名ですね。硫化カドミウムに含まれるセレン化カドミウムの含有量が増えると、今度は鮮やかな赤色を呈します。カドミウムレッドとも言われています。
塗料や印刷インキに使われるほか、カドミウムは耐熱性が非常に高いため、ガラス製品や陶磁器の絵付けとして使われることも多いようです。現在では有機顔料への代替が進められてはきていますが、顔料としての特性が非常に優秀なことから日本では根強い支持を集めています。逆に日本以外の国では、その高い有毒性から製造が禁止されているという側面も併せ持ちます。
ほかにもカドミウムの使用例で有名なものでは、カドミウムメッキというものもあります。現在では、やはりその有毒性からカドミウムメッキを実施している工場は大きく減りましたが、現在主流の亜鉛メッキに比べると防食性が非常に高く、特に海水に対する耐食性が高いことから、船舶や航空機で根強く使用されていることが多いようです。
ここまで紹介してきた用途のほかにも、カドミウムは様々なところで使用されています。それだけカドミウムという物質は使い勝手がよく、容易に手に入るということなのです。しかしその一方で、重大な公害を引き起こすような有毒な物質であるということを忘れてはいけません。
過去の土地利用履歴やカドミウム汚染で気になることがあれば、ぜひ一度ご相談ください。ご連絡お待ちしております。
■参考
イタイイタイ病の特徴(富山県)
農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(農林水産省)
■当社関連ページ
カドミウム及びその化合物
酒井
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