地歴調査って、よくフェーズ1ともよばれる調査ですよね?
どんな調査で、どんな使われ方をするんですか?
過去の住宅地図や空中写真、登記簿などの資料から土地の利用履歴を調べて、土壌汚染の可能性を調べる調査です。詳しく解説していきます。
土地の購入の際の検討材料として簡易に調査するものから、法律や条例に基づく義務調査で、詳しい地歴調査が必要なケースもあります。
地歴調査とは?
地歴調査は、資料等調査やフェーズ1と呼ばれたりもします。過去の土地利用履歴を調べて、使用されてきた特定有害物質の種類とその土地の汚染のおそれの可能性を評価する調査です。
具体的には、登記簿謄本や住宅地図、公的資料や市販の資料などの書類や土地に関する情報を入手して、調査対象地とその周辺の土地についての土地利用履歴を調べて、現在から過去にどんな事業所等があって、どんな汚染物質について汚染の可能性があるのかを調べます。
あくまでも書類上での調査で、土を採取したり分析することはありません。
2020年から2022年にかけて当社で実施した地歴調査のうち、約30%が過去に有害物質を使用する(もしくは使用する可能性のある)事業所等があり、「汚染のおそれが有る」という結果となりました。
地歴調査のみで、調査を済ませるか、次の表層土壌調査(土壌を分析する調査)をするかどうか迷われる場合もお気軽にご相談下さい。
調査の内容
地歴調査では、様々な資料を収集して、土地の履歴やその土地で操業されてきた事業所の内容等をまとめます。 登記簿、商業登記簿、住宅地図、地形図、空中写真などを収集して、土地利用の変遷調査を行ないます。 (空中写真は以前の土地の利用状況等を目視することによって状況を確認します。)
登記簿謄本(土地・建物等)による土地履歴調査
登記簿謄本(土地)による土地の履歴調査の例です。登記簿謄本では、過去から現在までの土地の所有者について調べます。このケースでは、「個人→〇〇印刷株式会社→〇〇ホーム株式会社→個人」と、所有が移っていることが分かります。
企業名が記載されている場合には、商業登記簿を取得してその営業内容を調べて、そこから汚染のおそれの可能性を評価することもあります。
古地図(地形図や住宅地図)による土地履歴調査
過去から現在までの地形図・住宅地図から、その土地の土地利用の履歴を調べます。地形図はかなり年代が古くからありますので、その土地がいつ頃から「森林・田」から「宅地・工場」に変わったのかなどを調べます。
住宅地図による土地履歴調査の例です。工場や事業所が何年から何年まで存在していたのか、現在から過去までの土地利用履歴について調べます。大規模な土地の場合は、建物の配置なども確認します。このケースでは、住宅地図から「田→〇〇印刷株式会社→駐車場」の履歴があることが確認できました。
空中写真による土地履歴調査
空中写真は以前の土地の利用状況等を目視することによって状況を確認します。利用履歴の変遷や建物の位置などを確認します。住宅地図や地形図では確認できない、埋め立ての様子や焼却炉の確認等を目視でする場合もあります。
敷地及び事業所の概要
敷地の測量図、建物の配置図など、現在はもちろん、過去についても収集できる情報は収集します。水質汚濁防止法や下水道法で届出されている場合はその書類や、配置図・配管経路等の図面も調べます。
現地踏査・聞き取り調査
事業主様はもちろん、聞き取りが可能な場合は現地周辺や土地の過去の利用状況を知る人への聞き取り調査を行ないます。特に土壌汚染対策法や条例に基づく地歴調査の場合には、どの場所でどの物質を使用等されているのかの特定が必要となりますので、使用場所・保管場所・排水経路等も確認します。
土地周辺の地質・地下水に係わる資料の検討
周辺の土質や地下水について調べます。
調査する項目は地歴調査の目的によって異なります。現地踏査、ヒアリング調査などは、省略することもあります。
- 登記簿謄本:「個人→〇〇印刷株式会社→〇〇ホーム株式会社→個人」と所有が移っている
- 住宅地図・空中写真:「田→〇〇印刷株式会社→駐車場」の土地利用履歴が確認できた。
- 印刷会社が存在したため、溶剤として使用されるトリクレンやジクロロメタン、塗料や着色料に含まれる重金属類を使用していた可能性があり、「対象地の汚染の可能性は否定出来ない。」となります。
年代が古くなるほど難しくなりますが、印刷会社で使用していた物質の記録などが残っている場合には、もう少し物質は絞れる可能性があります。
事例や費用について詳しくは↓こちらをご覧下さい。
ここまでは、地歴調査の内容についてみてきました。費用を知りたい方はこちら。
ここからは、どんな使われ方をするのかを詳しく見ていきたいと思います。
地歴調査の使われ方
1.土地の購入を検討するために
土壌を採取する調査に比べて費用がかからないため、土地の購入等を検討する際のスクリーニングとして使います。
例にも挙げたように、現在駐車場や住宅であっても過去に工場であった、といったケースは多くあります。
まず、地歴調査で土地の履歴をチェックしてから購入を考えれば、リスクも低費用で軽減することができます。
ただし、地歴調査で把握できるのは、あくまで土壌汚染の可能性の有無です。対象地に実際に土壌汚染があるかどうかは、表層土壌調査を行ってみなければ分かりません。
地歴調査のみで、調査を済ませるかどうか迷われる場合もお気軽にご相談下さい。
2.土壌汚染対策法や条例に基づく義務調査のために
土壌汚染対策法に基づく調査の際だけでなく、都道府県によっては、条例に基づく調査の際に、この地歴調査が義務付けられています。
土壌汚染対策法の改正に伴う、3,000㎡以上の土地の改変の際にも、この地歴調査(=土地利用履歴調査)が必要とされます。
条例や土壌汚染対策法での義務調査では、この地歴調査で汚染のおそれがなければ調査終了です。義務調査の場合には、当社のような指定調査機関が調査を実施しなければなりません。
3.汚染の原因を特定するため、汚染の懸念がある場合の調査計画を立てるために
地歴調査を行うことで、「何の汚染の可能性があるのか」「どこが汚染の可能性が高いのか」を調べることができます。この結果をもとに、効果的な表層土壌調査、詳細調査の計画を立てることができます。表層調査をする物質を絞りたい場合にも地歴調査を活用します。
逆に地歴調査を省いて土壌を採取する調査(表層土壌調査)をし、土壌を採取する調査で汚染が発覚した場合に、汚染原因を特定するために地歴調査を行うこともあります。
4.買い主や周辺住民への説明材料として
次の持ち主に対して、土地の使用履歴を説明して、安全性を伝えるために使用します。買い主に対して、過去に特定有害物質の使用が無いこと=汚染のおそれが無いことを説明するために使用します。また、土地の貸し借りで土地を返却等する場合に、貸主への説明材料として使用するケースもあります。
また、汚染が発見された場合に、周辺住民に現在・過去の敷地の境界を示し、汚染の範囲を的確に伝えるためにも使用します。特に、大規模な住民説明等で大きな力を発揮します。
どの内容を行うかは、調査の目的によってことなります。事例や費用について詳しくは↓こちらをご覧下さい。