クリーニング店って、義務調査が必要になるんですか?土壌汚染調査を求められることが多いって聞きました。。なぜなんです?
ドライクリーニングに、特定有害物質(パークレン)を使用している場合は義務調査になります。使用されていない場合にも、自主的な土壌汚染調査を求められるケースが増えています。
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なぜクリーニング店で調査が検討されるのか?
ドライクリーニングを行う際に、特定有害物質のテトラクロロエチレンを使用するためです。
クリーニング店と行っても、業態は様々で受け取りだけの店舗、水洗いでの洗濯とアイロンがけのみの店舗、これらに加えてさらにドライクリーニングを行う店舗などがあります。 また、ドライクリーニングと言っても特定有害物質ではないターペンという油性の物質の使用していた場合もあります。
このように、『クリーニング店』と言っても、テトラクロロエチレンを使ってドライクリーニングを行っていた場合やどんな物質を取り扱っていたか不明である場合に調査を検討されるケースが多いです。
クリーニング店での調査は義務調査?自主調査?
「特定施設」で特定有害物質の取扱いがある場合は義務調査
「特定施設」の場合
水質汚濁防止法や下水道法の「特定施設」として役所に届け出がされていて、特定有害物質(パークレン等)の取り扱いがある場合は、土壌汚染対策法第3条に基づく義務調査の必要があります。クリーニング店の廃業届を役所に提出すると、役所側で「特定施設」に該当するかが調べられ、土地所有者に調査命令が下されます。さらに、条例により調査が義務付けられる場合もあり、東京都条例の場合は事業者に調査命令が下されます。(詳しくは、各都道府県の条例をご覧ください。)
「特定施設」ではない場合
「特定施設」でなければ、基本的に調査は自主調査となりますが、 条例により調査が義務付けられる場合もあります。(詳しくは、各都道府県の条例をご覧ください。) また、「特定施設」として届け出はしていなかったものの、特定有害物質の使用があった場合もあるので、注意が必要です。
「特定施設」かどうか分からない場合
対象地が、「特定施設」かどうかは、事業主が把握しているはずですが、過去のことで忘れてしまっているケースも多々あります。 その場合は、管轄の役所の環境課など(土壌汚染調査について対応している課)へ問い合わせて確認することができます。
調査のタイプと注意点
義務調査の場合
調査が義務付けられている場合は、調査対象物質は、使用していた特定有害物質と分解生成物質のみとなります。
例えば、パークレンを使用していたクリーニング店ですと、テトラクロロエチレン、クロロエチレン、トリクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,1-ジクロロエチレンの5物質が考えられます。
自主調査の場合
調査を自主的に行う場合は、義務調査と同様に上記5物質を調査する場合と、特定有害物質すべてを調査する場合とがあります。
自主調査の場合は、土地売買に伴い売主、買主の間で、決めることになります。
『クリーニング店であったため、土壌汚染が気になる。』 → 5物質のみ調査
『クリーニングで使っていた物だけでなくて、全物質をみておきたい』 → 全物質を調査
調査する物質については、関係者間で協議することになります。
自主調査で、かつ調査物質を限定して実施することの多いクリーニング店舗の調査。
どんなの選択をされるにしても、土地活用や売買を円滑に進めるために、後に訴訟等にならないよう、土壌汚染についてよく協議されたうえで、契約書にも明記されることを強くお勧めいたします。
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クリーニング店で汚染の可能性がある物質と基準値
クリーニング店で、使用される可能性のある土壌汚染物質は、主にはテトラクロロエチレン(パークレン)になります。
項目 | 主な使用方法(現在は禁止されている以前の用途を含む) | 溶出量・地下水基準(mg/L) | 含有量基準 (mg/kg) |
テトラクロロエチレン (別名パークロロエチレン) |
容易に油を溶かすという性質があるため、ドライクリーニングの溶剤として使用される | 0.01 | ― |
クロロエチレン | 分解生成物 | 0.002 | ー |
トリクロロエチレン | 分解生成物 | 0.01 | ー |
1,2-ジクロロエチレン | 分解生成物 | 0.04 | ー |
1,1-ジクロロエチレン | 分解生成物 | 0.1 | ー |
*テトラクロロエチレンのみが、ドライクリーニングのために用いる溶剤に含まれていますが、テトラクロロエチレンが土壌に浸透した場合、土壌中に生息する微生物に分解され、クロロエチレン、トリクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,1-ジクロロエチレンへと分解されるため、土壌汚染調査を行う場合は、テトラクロロエチレン以外にこれら4物質についても調査対象となります。
溶剤は、一斗缶に入れられて販売されています。このまま保管したり、一斗缶からドライ機へ投入したりして使用されています。
*ターペンを使用していた場合は、油分が調査対象物質となります。油分に基準値はありませんので、油の臭いがあるか、油膜が張るかなどの調査を行います。
*現在は使用されていませんが、かつては四塩化炭素も溶剤として利用できたので、当社の調査ケースではまだありませんが、使用履歴が確認されれば、調査対象となります。基準値は0.002㎎/Lです。また、1,1,1-トリクロロエタンも使用されていたケースでは調査が必要になります。基準値は1㎎/L。
続いては、クリーニング店舗での土壌汚染調査の詳しい方法や流れをみていきます。
土壌汚染調査の方法
調査地点について
土壌汚染対策法では、基本的に、10m×10mの格子を一つの単位として調査します。
クリーニング店の場合は、ドライクリーニングを行うドライ機や一斗缶に入った溶剤を保管していた場所付近を調査地点とします。 特定有害物質を含む溶剤をこぼしたりすることで、土壌汚染を引き起こすためです。
また、過去にクリーニング店であり、現在は解体され異なる土地利用をしている場合は、ドライ機を置いていた場所や溶剤を保管していた場所などの情報を収集した上で、それらの場所付近を調査地点とします。
クリーニング店での調査の流れ
クリーニング店で、テトラクロロエチレン、クロロエチレン、トリクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,1-ジクロロエチレンを調査する場合の調査フローです。
建屋があり、クリーニング店として操業中であっても、土壌ガス調査は行うことはできます。
床に直径3cm程の穴を開けて、地表面の土壌から深度1m程まで管を入れて土壌中のガスを採取します。
土壌ガスが確認され、ボーリング調査を行う場合は、大型の機材の搬入が必要となるため、解体中や解体後に調査を行うことになります。
対象地の広さや建物の状況により調査方法は様々ですので、詳しくはお気軽にご相談ください。
今後の法令調査や売買等を見据えて、事前に特に気になるところを調査しておかれるケースもございます。
調査費用について
自主調査の場合の金額です。
- 対象地が200㎡以内でテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,1-ジクロロエチレンの5物質を調査する場合は、約20~25万円程度の費用になっております。(大阪市内、東京都内及び近郊の場合)
- 対象地が900㎡以内で、特定有害物質すべてを調査する場合は、約25~50万円程度の費用になっております。(大阪市内、東京都内及び近郊の場合)
対象地の状況や、調査する物質の数などによって価格は変動致しますので、お気軽にご相談ください。
今後の法令調査や売買等を見据えて、事前に特に気になるところを調査しておかれるケースもございます。
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